こんにちはエンタメ考察室です。
不死川玄弥は風柱・不死川実弥の弟であり鬼喰いができるというとても珍しい隊士です。
初登場時は暴力的でいけ好かない印象の登場人物でした。
ですが物語が進むにつれて明かされていく兄・実弥への思いや絆に涙した人も多いのではないでしょうか。
今回は炭治郎の同期でもある不死川玄弥について解説していきたいと思います。
また玄弥が鬼喰いをするようになった理由についても考察しているのでぜひ最後までお楽しみください。
※当記事はネタバレを含みますのでご注意ください。
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1.不死川玄弥
不死川玄弥は竈門炭治郎と同じタイミングで藤襲山で行われた最終選別を通過し鬼殺隊に入隊しました。
鋭い眼光と鼻を横切るように引き裂かれた大きな傷跡、側面を刈り上げたワイルドな髪型が特徴的です。
風柱・不死川実弥の弟で派手な傷跡と攻撃的な雰囲気が実弥に似ていますよね。
性格でも兄弟で似通った部分が多く描かれています。
例えば公式ファンブック・弐では玄弥について
「どんなにきつい修行からも逃げない」
といった説明がありました。
さらに
という表現もされていました。
読者から見た印象としても玄弥は基本的に無愛想な性格で登場初期は特に粗野な言動が目立っていましたよね。
しかしそこには
という強い願望としかしながら自身に鬼殺隊士としての才能がないという現実のギャップに焦りがありました。
炭治郎をはじめ周囲の仲間への暴力的な言動に繋がっていましたが炭治郎たちとの関わりの中でだんだんと角が丸くなっていきます。
実際の不死川玄弥は七人兄弟の次男としてお兄ちゃんであることもあり優しい性格です。
自分への過度な負担を迷いもなく背負い仲間を庇ったり鬼化して突っ込む戦い方からは自己犠牲的な性格も垣間見えます。
特に実弥の思いは物語を通して玄弥の行動の動機指針になっており一途な面も印象的でした。
序盤こそ暴力的で刺々しい雰囲気でしたが鬼喰いの負担により暴走していた所を悲鳴嶼行冥に助けられて以降は少しずつ角が取れていきます。
さらに鬼殺隊に入ってから思春期に入ったことで女性を意識して動揺する様子も描かれていました。
普段はぶっきらぼうで冷たい印象の強い玄弥だけに等身大の一面が見られるのも魅力の一つです。
2.血鬼術の謎
黒死牟戦で見せた血鬼術の謎について考察していきます。
不死川玄弥は鬼殺隊士の中でも身体能力に優れています。
これは「柱」の中でも最強の身体能力を有する悲鳴嶼に教えを請うていることにも繋がっています。
悲鳴嶼は
と説いており柱稽古も「大岩を動かす」という身体強化の修行でした。
まず玄弥の強さを語る上で外せないのが「鬼喰い」という独自の能力です。
玄弥は人間離れした消火器官を持っており鬼の骨肉を摂取することで鬼の力を一時的に得るという特異体質を持っています。
これによって鬼の高い生命力や人間の比ではない身体能力を手に入れることができます。
さらには鬼の血鬼術を使用することもできるようになり吸収する鬼の強さによって玄弥の能力も変化します。
上弦の壱・黒死牟戦では玄弥が鬼化し血鬼術で動きを止め実弥たちが黒死牟の頸を切断するという流れでした。
唐突に玄弥が血鬼術を使ったような流れになっていたため読者の間で2つの説が出ています。
一つ目の説は半天狗を食したことによる鬼喰いの効力が残っていたという説。
2つ目の説は玄弥自身の能力であったという説です。
これについては鬼喰いの能力は一時的という説明が本編やファンブックでも明記されているため「半天狗の能力説」よりも玄弥自身の能力説の方が濃厚だと思われます。
さらに黒死牟に対して発された血鬼術は木が立派に生えたような造形をしていました。
これは玄弥の趣味として公式で記載されている「盆栽」に着想を得ている可能性があります。
もしも無意識に自身の趣味が反映されたのだとすると玄弥自身のユニークな血鬼術が最終局面で開花した瞬間と見ることができます。
「盆栽」について補足すると玄弥の鎹鴉の名前は「榛」で盆栽にも使われる植物です。
この榛の花言葉には「仲直り」があります。
趣味だけでなく兄・実弥への思いも反映されていると捉えることができグッとくる設定ですよね。
もう一つ玄弥が修得している能力として反復動作というものがあります。
これは予め決めておいた動作によって集中力を極限まで高め一瞬で爆発的なパワーを発揮するというものです。
玄弥はこの能力を悲鳴嶼から教わったため反復動作の際には「阿弥陀経」を唱える形になっています。
刀鍛冶の里編で玄弥が半天狗に腹を貫かれ致命傷を負ったように見えたところ「阿弥陀経」を唱え始め勢いを巻き返す場面がありました。
また悲鳴嶼の柱稽古では大岩を動かせない炭治郎らに玄弥が反復動作を教えてあげていましたね。
以上を踏まえると玄弥の能力は明らかに一般的な鬼殺隊士より秀でているとと言えます。
しかし玄弥は鬼殺隊士として圧倒的な不利を抱えています。
それは全集中の呼吸が使えないということです。
そのため玄弥の日輪刀の色は変わりません。
この理由は明かされていませんが呼吸が鬼狩りのために人間が極めた技である歴史を考えると玄弥の持つ「鬼の素質」が枷になっている可能性があります。
玄弥は日輪刀と南蛮銃の二刀流で戦う作中唯一の登場人物です。
玄弥の日輪刀は刃渡りが短めであるため遠距離攻撃を補助する目的として銃も使用していると考えられます。
また呼吸による威力アップが望めないため銃で火力を補うことも意図しているかもしれません。
このように自身の不利を補っている玄弥ですが基本的に鬼殺隊は鬼の頸を狩るために日輪刀による「型・剣技」が必須でありそれを極めしが柱になっています。
呼吸法で体を強化することが上位隊士には当たり前であることを考えると玄弥は柱になるほどの実力はないと言えます。
しかし鬼殺隊士の強さが「呼吸の有無」や「剣技の熟練度」のみで測れるものではないということも事実です。
鬼との単純な一騎打ちともなれば話は別ですが集団戦においては特に仲間との連携や的確な支援、苦しい局面での心構えなど様々な要素が勝利に繋がります。
玄弥は炭治郎たちそして最終戦では最愛の兄の力になる功績を残した事実があります。
玄弥の不安定で未熟な心構えはそれでも揺るがない兄や仲間への思いそしてそのためには自分が犠牲になることも惜しまないという「強さ」と表裏一体でありこれまでの苦しい戦況を救ってきたのではないでしょうか。
3.刀を催促した理由
次に最終選別で色変わりの刀を催促した理由について考察していきます。
不死川兄弟は鬼滅の刃の中でも壮絶な過去を背負う人物です。
幼い頃にろくでなしの父を亡くした後、実弥は玄弥に
「いいな?」
と約束をします。
しかしある時、母を鬼にされてしまい鬼化した。
母がまだ幼い弟妹を殺害してしまうのです。
そして実弥はその鬼を母親とわからないまま生き残った玄弥を守るために母を殺しました。
気が動転していた玄弥はとっさに兄を
と罵ってしまいます。
これが後々玄弥が実弥に
と思うようになり実弥に会うために柱を目指すきっかけとなるのです。
という台詞には玄弥の切実で純粋な願いが詰まっていたと思います。
しかし玄弥は前述したように鬼殺隊士として能力不足な部分がありました。
物語序盤では玄弥自身がそのことに焦燥感を抱いている様子が如実に現れていました。
例えば最終選抜に合格した玄弥は
「鬼殺隊の刀!色変わりの刀!」
と叫び同じ試験に参加していた炭治郎に無理やり止められるという場面がありました。
なぜこれほど日輪刀を終えることを急いでいたのでしょうか。
理由としてはこの時すでに自分は呼吸を使えないことを分かっていたからこそ一刻も早く日輪刀の色が変わるかどうかを確かめたかったからだと考えられます。
というのも通常、最終選別には育ての許可が出てから行くので玄弥も育ての元で修行した可能性が高く、その過程で呼吸を使えないことが判明していたとしても不思議ではありません。
このように一刻も早く日輪刀の色を変えることができることを確かめたかった玄弥ですが結果的に炭治郎によって止められ炭治郎に敵対心を持つきっかけとなりました。
鬼殺隊剣士としての自身の才覚に対する不安が表れた印象的な場面と言えます。
そんな焦燥感の滲み出る玄弥の行動原理には兄・不死川実弥の存在があります。
対して謝罪したい実弥に会いたい守りたいという想いが玄弥を鬼殺隊で出世するという目標に固執させそれを実現するには実力不足な自身に対する焦燥感に突き動かされた結果、玄弥は「鬼喰い」の能力を得るに至っています。
「なんでだよ!!俺は兄ちゃんの弟なのに!!」
という玄弥の台詞からも兄に会い認められることを一心に夢見てきたことがわかります。
また柱として活躍する優秀な実弥の弟であるにも関わらず鬼殺隊士としての能力に恵まれない自分に対する絶望も感じられぐっとくる方も多かったのではないでしょうか。
このように「兄の存在が全て」な玄弥ですが「鬼喰い」により心身が暴走し疲弊しているところを岩柱・悲鳴嶼行冥に助けてもらっています。
継子にしてもらうよう頼み込むも玄弥に素質がないことを見抜いていた悲鳴嶼には断られていました。
しかし玄弥は悲鳴嶼について行き名目上の弟子として受け入れられるに至りました。
様々な人たちとの関わりの中で玄弥が兄以外の尺度で自分を見つめていくことにつながっています。
また炭治郎たちとの関係が変化していくきっかけとなったのは里を強襲してきた十二鬼月の上弦の肆・半天狗との戦闘でした。
この戦闘で玄弥は敵対心を抱いていた炭治郎・禰豆子と共闘することになります。
炭治郎が駆けつけた時にはすでに玄弥は鬼化して暴走が止まらず
と炭治郎にまで突っかかる態度でした。
しかし一方で手柄よりも鬼を仕留めることを優先する炭治郎の姿と窮地に陥った自分に対する炭治郎のサポートにより見事半天狗の討伐に成功します。
この経験は自分の能力への自信のなさや焦りから自分本位のあるいは自己犠牲的な選択をしていた玄弥が周囲の仲間という存在に目を向ける重要な戦闘となりました。
兄に認められる兄を守れる存在になりたいと願う玄弥が初めてでより広い視野で自分の行動を見つめ直すきっかけになったのです。
そしてそれは奇しくも妹を守るために戦う炭治郎によってもたらされたという点も心が動かされる対比だったと思います。
刀鍛冶の里編の最後には炭治郎と禰豆子に
「炭治郎」
「…禰豆子」
と優しく呟く場面や柱稽古で炭治郎に反復動作のやり方を親身に教えてあげる場面がありました。
元来の優しく他人思いの玄弥が見られるようになり印象がかなり変化した方も多いと思います。
外観すると玄弥の心情変化は兄への憧憬や使命感を精神の核にした少年が弱い自分と向き合い時に間違えながら自己肯定し他者を守る理由を見つけていく過程と言えるのではないでしょうか。
とはいえ実弥との和解は厳しい一途をたどりました。
実弥は玄弥を
「俺には弟なんていねえ」
「いい加減にしねぇとぶちころすぞォ」
と突き放し続けさらには玄弥の「鬼喰い」について知るや否や周囲も震えるほどに激怒します。
玄弥を想うが故の怒りだったのですがそれが玄弥に伝わるのは文字通り「最期の瞬間」だったのです。
4.鬼喰い
鬼喰いをするようになった理由について考察していきます。
不死川兄弟が黒死牟戦で和解する場面は作中屈しの名場面ですよね。
「弟や妹にしてやれなかった分も」
「お前がお前の女房や子供を幸せにすりゃよかっただろうが」
「そこには絶対に俺が鬼なんか来させねぇから……」
という実弥の台詞には自分の本心を欺いてまで弟が普通の幸せを得ることのみを願い戦い続けてきた兄の本心が詰まっています。
ようやく二人の溝が埋まった最中、対峙している上弦の壱・黒死牟に押され玄弥は致命傷を負ってしまいます。
実はそんな玄弥に
と叫ぶももはや玄弥の体は真っ二つにされ致命傷を負った状況でした。
玄弥の最期に見た景色は兄の泣き顔そして優しく自分を抱きしめる姿でした。
と途切れ途切れに言う玄弥の体はほとんどが消えかかっているものの優しい目をしていました。
「弱く才能のない」はずの弟であった玄弥が鬼の中でも最上位の黒死牟に対して兄をそして仲間を守るために戦い抜きその意志を全うした瞬間でした。
兄に突き放されても自身の能力不足に落胆しても最終局面で兄とのわだかまりを解き兄を守るために上弦の壱に対峙した姿には玄弥の初志貫徹とした強さが感じられました。
公式ファンブックによると玄弥が鬼喰いをするようになった理由は剣士としての才能がないため精神的に追い詰められて鬼を食べてしまったことがきっかけだそうです。
それほどにまで思い詰めた理由は兄・実弥を思うが故だとも言えます。
努力をしても呼吸の使い手とならなかったために日輪刀の色は変わらず鬼狩りとしての才能は低いままだった自分に対して嫌気がさしたのでしょう。
元々癇癪を起こしやすい性格の玄弥が手詰まりの状態で「鬼喰い」をしてしまったのだと思います。
唯一の肉親である最愛の兄を傷つけた自分を許して欲しくて認めて欲しくて柱になって直接兄に誤りたいけれど自分の実力ではどうにもならない気持ちの焦りから捨て身の行動に出てしまったと考えられます。
どうしても兄に会いたい弟と弟に会えなくてもいいからなんとかして鬼から弟を守り抜きたい兄。
不器用ながらもお互いを思いやっている姿は何とも不死川兄弟らしいですよね。
玄弥は最期に死を犠牲となることも覚悟してようとして兄を守りやっと謝ることができました。
兄が命を懸けて弟を守りたかったようにまた弟である玄弥も兄を守り抜きたかったのです。
玄弥は鬼を取り込んでしまったため人間のように亡骸が残ることもなく消えていってしまいました。
その間も実弥に対して謝罪の言葉と感謝の気持ちを述べ続けている場面に涙した人も多いのではないでしょうか。
ぶっきらぼうで粗野な性格ですが本当は兄想いで優しく最終決戦でもその桁違いの強い覚悟を見せてくれた不死川玄弥。
兄と比較して鬼殺隊士としての能力に劣り焦燥感に苛まれ自暴自棄になる場面もありましたが物語が進むにつれて炭治郎らと共闘したり悲鳴嶼行冥と出会ったりする中で心身ともに大きな成長をしていった鬼殺隊士です。
特に最愛の兄との和解の場面はあまりにも切なく涙を誘う最後でした。
まとめ
玄弥が自身の弱さを抱えながら克服し強者に対峙する姿にはグッとくる人も多かったと思います。
不死川兄弟の絆に感動した!
玄弥には死んでほしくなかったと思った人はまた次の記事でお会いしましょう。
今回は以上です。
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