『鬼滅の刃』(C)吾峠呼世晴/集英社
こんにちはエンタメ考察室です。
最年少で柱に就任し作中に登場した鬼殺隊の中でも屈指の天才剣士といえば時透無一郎ですよね。
可愛らしい見た目とは裏腹にかなりの毒舌キャラというギャップが魅力的ではないでしょうか。
今回はそんな霞柱・時透無一郎について解説していきたいと思います。
また双子の兄・有一郎との絆や上限の壱・黒死牟との対比についても考察しているのでぜひ最後までお楽しみください。
※当記事はネタバレを含みますのでご注意ください。
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1．時透無一郎
無一郎は黒髪の長髪と虚ろな表情が特徴的な少年です。
淡々とした捉えどころのない性格をしており関わりの浅い人物や興味のない物事については極端に関心が薄くなる傾向にあります。
那田蜘蛛山での戦いの後に行われた柱合裁判では他の柱たちが鬼を連れていた炭治郎の処遇について討論する中、
と考えながらぼんやり空を眺めていました。
また刀鍛冶の里では小鉄に対して、
と発言し自らの要求を無理やり通そうとしています。
正論を語ることが多いですが全くと言っていいほどオブラートに包まず伝えるため冷淡で攻撃的な人物という印象を与えがちです。
しかしこれらの毒舌家な一面は無一郎の本来の性格ではありません。
後ほど解説しますが無一郎は過去に負った怪我が原因で鬼殺隊入隊前の記憶を失っていました。
しかし炭治郎との出会いや上限の伍・玉壺との戦いを経て双子の兄・有一郎との絆や過去の記憶を取り戻します。
記憶を取り戻した無一郎が記憶のないときの僕は兄に似ていた気がすると語っていることから攻撃的で毒舌家な側面は有一郎の性格と言えるでしょう。
記憶を取り戻した後は本来の穏やかな性格へと変化し柔らかい口調で話すようになりました。
しかし毒舌家な側面は残っており柱稽古では課題を終えない隊士達に冷ややかな態度を取っています。
また公式情報によると無一郎の誕生日は8月8日とされています。
8という数「痣」は横に回転させることで「無限（∞）」を示す記号になりますよね。
作中では「無一郎の無は無限の無」と言われていました。
ワニ先生が無一郎の誕生日に8を選んだのは無一郎自身を表す無限という意味が込められているからではないでしょうか。
また同じ数「痣」を2つ並べることで双子を表す意味も含まれているのかもしれんませんね。
2．柱の中での強さ
霞柱である無一郎は「霞の呼吸」を使います。
公式ファンブック弐によれば敵を翻弄する高速移動が霞の呼吸の大きな特徴とされています。
中でも独自の型である漆ノ型・朧は著しい緩急をつけることでまるで幻を相手にしているように感じさせるまさに霞のような技と言えるでしょう。
天才剣士と呼ばれる無一郎は刀を握ってわずか二ヵ月で柱に就任しています。
さらに現在の柱の中では最も早く「痣」に発現しており柱としては唯一単独で上限の鬼を討伐しています。
後に「赫刀」「透き通る世界」といった最強レベルの能力も習得し上限の壱・黒死牟の討伐にも大きく貢献しました。
こうした点から無一郎の潜在能力の高さがうかがえますよね。
また「はじまりの呼吸の剣士」の血筋である継国家の子孫でもあり非常に優れた血統の持ち主ともいえるでしょう。
次に無一郎が柱の中でどのくらいの強さに位置するのかについて考察していきます。
結論から言ってしまうと柱では悲鳴嶼行冥、不死川実弥、伊黒小芭内といったトップクラスの柱に次ぐ実力の持ち主ではないでしょうか。
根拠の1つ目は無一郎の潜在能力の高さです。
先ほども解説したように無一郎は最年少で柱に就任し「痣」をはじめとする数々の特殊能力に目覚めています。
14歳にして独自の型を編み出していることからもその潜在能力の高さがわかりますよね。
これほどまでに才能に恵まれた柱は無一郎ただ一人ではないでしょうか。
しかし早熟と言える無一郎ですが見方を変えれば他の柱よりも経験が浅いとも言えます。
剣の腕が立つからといって必ずしも実際の戦闘で勝利できるとは限らないと思います。
様々な血鬼術を使うを人を相手にする以上いかに想定外の出来事に対応できるかという点も重要になるのではないでしょうか。
こうした柔軟な思考や危機的状況における判断力はいかに場数をこなしているかいかに修羅場をくぐってきたかによって大きく変わってくるを考えられます。
実際、黒死牟の不規則な間合いを目の当たりにした実弥は長年の経験で培われた感覚を持っていなければ回避は困難であると感じていました。
最年長の柱である悲鳴嶼さんや自らの「稀血」を囮りりにしてがむしゃらに鬼と戦っていた実弥と比較したとき年齢が若い無一郎の経験の浅さは否めないと思います。
また最終決戦において無惨の攻撃を何度も回避していた伊黒もまた無一郎よりも格上と言えるのではないでしょうか。
井黒も同様に自らの握力だけで「赫刀」を発動させています。
しかし無一郎が死に際の力でようやく「赫刀」を発動できたのに対して伊黒は意図的に「赫刀」を発動させています。
決して進退能力が高いとはいえない伊黒ですが無惨の攻撃を何度もかいくぐる視点の広さや「赫刀」を発動させるセンスの高さは無一郎よりも優れていると言えるでしょう。
以上の点から無一郎は実力的には最強クラスの堅守と考えられますが若さ言えの経験の浅さから悲鳴嶼さんや不死川実弥、伊黒小芭内のように経験豊富な柱には一歩劣ると考えられます。
もし無一郎が経験を積んで成長していたならば鬼殺隊最強とされる悲鳴嶼さんすら超えていたのかもしれませんね。
3．有一郎との絆
無一郎は木こりの息子として生まれました。
もともとは両親と双子の兄・有一郎との4人家族でしたが母親を肺炎で父親を事故で亡くしています。
当時10歳だった時透兄弟は子供ながらに力を合わせて暮らしていました。
有一郎は嵐の中、母親のために薬草を採りに出かけて亡くなった父親をよく思っておらず
と冷ややかに語っています。
唯一の肉親である無一郎に対しても
と告げるなど口の悪い少年でした。
ただこの厳しい言動の裏には人のために身を削りがちな弟の身を案じる気持ちがあったのだと思います。
ある日、産屋敷耀哉の妻・あまねからの勧誘をきっかけに2人が継国家の子孫である事実が判明します。
鬼殺隊として戦って人々を救いたいという無一郎に有一郎は人を助けることができるのは選ばれた人間だけだと怒鳴り散らすのでした。
やがてお互いに口をきかなくなった二人ですが鬼の襲撃によって有一郎が負傷します。
怒りに身を任せて鬼を討伐した無一郎でしたが兄の傷は深く今にも命が失われそうになっていました。
死の間際、有一郎は無一郎の「無」は無限つまり誰かのために無限の力を出せる選ばれた人間であることを告げながらこの世を去りました。
その後あまねに救われた無一郎は鬼殺隊に入隊することになりますがこの時の怪我が原因で記憶を失ってしまいました。
玉壺との戦いで記憶を取り戻した無一郎は
と言っています。
実際記憶を失っている時の無一郎の刺々しい言動や俺という一人称は兄・有一郎にそっくりです。
これは封印された記憶の中の有一郎と自分を混同していたためではないでしょうか。
無一郎の場合記憶喪失とはいっても完全に抹消されたわけではなく一時的に忘れていただけと言えます。
つまり潜在的には有一郎の存在を覚えており無意識に有一郎の言動をトレースしていた可能性があります。
公式ファンブック・弐では自分の言動が兄に似ていたことに対して無一郎は兄が自分を守っていてくれたように思えて嬉しく感じていたことが明かされています。
記憶を取り戻したことで本来のせいか口に戻った無一郎ですが戦闘などで気が立っている時には一人称が僕ではなく俺になることがありました。
無一郎も男の子ですし柱として数々の修羅場をくぐってきていると考えられますので気持ちが高ぶったときくらいは俺ということもあるかもしれません。
しかし見方を変えてみると記憶を取り戻したことでより一層兄の存在を感じ取っていたとも考えられます。
昔の人格を取り戻した無一郎ですが同時に有一郎の記憶も取り戻しています。
つまり有一郎の性格や言動ともに生まれ育った思い出や絆などより深く兄の存在をイメージできるようになったと言えるでしょう。
記憶喪失の頃の自分を有一郎が守ってくれていたように感じていた無一郎ですのでたとえ肉体は失われても心や魂はいつまでも共にあると考えていたのではないでしょうか。
戦闘などの大事な局面においては心の中の有一郎と一緒に立ち向かっていたとしても不思議ではありません。
また作中では有一郎と黒死牟の思いが対比として描かれています。
上弦の壱・黒死牟は人間時代の名を継国巌勝といい「はじまりの呼吸の剣士」継国縁壱の双子の兄でした。
無一郎と有一郎はそんな黒死牟の遠い子孫にあたります。
同じ双子の兄弟として両社の人生には重なる部分があるのでははないでしょうか。
例えばどちらの兄弟も兄側の心情が原因で兄弟関係がうまくいっていませんでした。
有一郎は弟に対して「無一郎の無は無意味の無」と告げ常に厳しい態度で接しています。
黒死牟もまた天性の才能を持って生まれた縁壱に嫉妬し心の距離を置くようになりました。
一見するととても似ているように思える両者ですが有一郎は本心では弟に死んほしくないという思いを持っていましたよね。
両親のように死んでほしくないからこそ「無一郎の無は無意味の無」と言って弟の行動を制限しようとしたり鬼殺隊への入隊を頑なに拒んだりしていました。
黒死牟も初めは兄として弟を愛していたと思います。
しかしいつしかその心の大部分が嫉妬で埋め尽くされた結果
とまで感じるようになってしまいました。
厳しい態度をとりながらも常に弟の身を案じていた有一郎は最終的に弟と和解することができました。
一方で嫉妬に狂った黒死牟は最後まで弟の気持ちを理解することができませんでした。
つまり弟にだけは生きてほしかったに有一郎と弟に死んでほしいかった兄・巌勝の対比が作中で描かれていたのではないでしょうか。
また無一郎と黒死牟の生き様も対比として描かれています。
先ほども解説したように無一郎の「無」には「誰かのために無限の力を出せる選ばれた人間」という意味が込められています。
実際、無一郎が「痣」や「赫刀」「透き通る世界」といった能力を発現したのは必ず誰かのために力を奮っている時でした。
「痣」は自分を守ってくれた小鉄や刀鍛冶士たちを「赫刀」と「透き通る世界」は共に戦っていた悲鳴嶼さんや不死川兄弟を思いながら戦っていました
まさに無一郎は誰かのために限界を超える力を出してきたのではないでしょうか。
無一郎が命をかけて中まを守ったからこそ鬼殺隊は無惨討伐という悲願を達成できたと言えるでしょう。
14歳という短すぎる人生ではありましたが悔いのない人生を送った無一郎は僕は幸せになるために生まれてきたんだというひとつの答えを見いだすことができました。
黒死牟も長い鍛錬の末に「痣」や「透き通る世界」といった能力を習得しています。
誰かのために戦ってきた無一郎とは違い黒死牟は常に自らの力を高めることしか考えていませんでした。
むしろ鬼なり人間を食べるようになったことで他人を踏み台にして強さを得るようになったと言えます。
黒死牟は人間の頃から鬼狩りになるために家や妻子を捨てていますし戦国コソコソ噂話では黒死牟が無惨の配下になった時には当時の産屋敷家の先代当主を殺害して首を持っていったことも明かされています。
このように自分のためだけに力を振るってきた黒死牟には同じ思いで戦う仲間もおらず縁壱を超えるという目的も果たせませんでした。
400年以上を生きた黒死牟ですが
と自らの人生に意味を見いだすことができないまま消滅していきました。
時透兄弟も黒死牟も最終的には種という結末を迎えていますがそこに至るまでの過程や思いには明確な差が生まれたと言えるのではないでしょうか。
つまりたった14年の人生でも意味のある生き方をした無一郎と100年以上生きても生きる意味を見つけられなかった黒死牟の対比が描かれていたと考えられます。
4．無一郎の最期
最終決戦で無一郎は悲鳴嶼さんや不死川兄弟とともに上弦の壱・黒死牟と激闘を繰り広げました。
黒死牟に片腕を切断された無一郎は失血の多さから自分に残された時間が残りわずかであることを悟ります。
悲鳴嶼さんや不死川実弥、五体満足で無惨のもとに送るため無一郎は命をかけて立ち向かえます。
最終的に胴体を両断されてしまった無一郎ですが死と引き換えに発言した「赫刀」は黒死牟討伐に大きく貢献しました。
黒死牟との戦いで命を失った無一郎はあの世と思われる場所で亡き兄・有一郎との再会を果たします。
大量の銀杏の葉が舞うこの場面は兄弟の絆が書かれた印象的なシーンですよね。
銀杏の花言葉は「長寿」と「霊魂」であり花言葉と場面がリンクしていると思われます。
先ほども解説したように有一郎は
という無一郎を否定し続けてきました。
しかし実際は唯一の肉親である弟・無一郎に長生きして欲しい一心だったことが明らかになっています。
黒死牟との戦いの後、あの世と思われる場所で無一郎と再会した有一郎は顔を見るなり
と涙ながらに叫びました。
さらに
「お前はまだ14だぞ
こんなんじゃ何のためにお前が生まれてきたのか分からない」
と発言しています。
そして最後には
と本心を語りました。
銀杏には霊魂つまり亡くなった有一郎の無一郎に長生きしてほしかったという「長寿」の願いが込められているのではないでしょうか。
そんな有一郎に対して無一郎は毅然とした態度で僕は幸せになるために生まれてきたんだと告げています。
先ほども解説したように無一郎は記憶喪失の間も無意識に兄の言動をなぞっていました。
記憶を取り戻した後も心は常に兄とともにあったといえます。
無一郎の中では自らのが歩んできた人生がそのまま有一郎の人生でもあったのではないでしょうか。
だからこそ自分だけではなく有一郎の分まで兄と一緒に幸せになるために生まれてきたという結論に至ったと考えられます。
無駄死にだという有一郎の言葉に対して無一郎は涙ながらに無駄死になんて言わないで他の誰かにならなんて言われてもいいでも兄さんだけはそんな風に言わないでよと訴えました。
無一郎は自身の人生に対して幸せだと思う瞬間が数え切れないほどあった仲間のために命をかけたこと後悔なんてしないと語っています。
常に兄とともに生きてきたつもりだった無一郎にとって自身の人生を否定される事は兄の人生を否定されることと同じだったのではないでしょうか。
だからこそ兄にだけは自身の悔いのない人生を認めて欲しかったのだと思います。
14歳という若さで亡くなってしまった無一郎ですがその人生は多くの幸せと充実感に満たされていたと言えるでしょう。
まとめ
初登場時はあまり人間味が感じられずただ冷たい印象が強かった無一郎ですが物語が進むにつれて優しい人柄や悲しい過去が明らかになっていきました。
14年という短い生涯ではありましたが多くの仲間に支えられ自分の生きたいように生き切った無一郎の人生はとても素晴らしいものだったのではないでしょうか。
無一郎と有一郎の絆に感動した無一郎には死なないでほしかったと思った人はまた次の記事でお会いしましょう。
今回は以上です。
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