こんにちはエンタメ考察室です。
上弦の鬼の中でも別格と呼べる高い実力を持ち「始まりの呼吸の剣士」継国縁壱と深い因果で結ばれた鬼といえば上弦の壱・黒死牟ですよね。
柱三人を相手にしてもまだ余裕を見せる堂々とした振る舞いには敵ながら思わずかっこいいと感じてしまいます。
戦いが始まって早々無一郎の腕を斬り落とした場面に驚愕した人も多いのではないでしょうか。
今回はそんな上弦の壱・黒死牟について解説していきたいと思います。
また継国縁壱との対比描写や黒死牟が日の呼吸を修得できなかった理由についても考察しているのでぜひ最後までお楽しみください。
※当記事はネタバレを含みますのでご注意ください。
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1.黒死牟
黒死牟は侍のような出で立ちと六つの目が特徴的な鬼です。
十二鬼月の中で最も位の高い「上弦の壱」であり鬼の始祖・鬼舞辻無惨に次ぐ実力の持ち主と言えるでしょう。
物静かで落ち着いた性格をしており感情的になることがありません。
公式ファンブックにでは無惨とは意外と気が合っていたことが明かされています。
無惨は鬼の思考を読めるので基本的に鬼は怯えていますが黒死牟は腹の中を探られても気にならなかったそうです。
無惨を裏斬るつもりは一切なくむしろ感情を隠して取り繕わなくて良いことから黒死牟はむしろ気が楽に感じていました。
後ほど解説しますが元鬼殺隊であり「始まりの呼吸の剣士」継国縁壱の双子の兄でもありました。
黒死牟の特上の一つとして6つの目が挙げられます。
黒死牟が六つの眼を持つ理由は弟・縁壱の人間離れした動きを見切りたかったためではないでしょうか。
これを裏付けるかのように刀鍛冶の里で登場した縁壱を模範に作られたからくり縁壱零式には腕が六本付いていました。
縁壱零式の持ち主である小鉄は
その剣士の動きを再現できなかったから」
と説明しています。
つまり腕を六本にしなければ再現できないほど素早い動きを見切るために黒死牟は六つの目を手に入れたと考えられます。
また黒死牟は疫病の「ペスト」を元にしていると言われています。
ペストとは別名「黒死病」と呼ばれており黒死牟と名前の響きが良く似ていますよね。
ペストには全身に痣が浮き出る症状があり黒死病の名前の由来とされています。
普通の鬼とは違い人間時代に「痣者」だった黒死牟と重なる部分があるのではないでしょうか。
さらに「牟」という文字には「瞳」という意味があります。
ペストを意味する「黒死病」に黒死牟の大きな特徴である全身の瞳を意味する「牟」を足して黒死牟と名付けたのかもしれませんね。
日本においてペストは大正時代以降の発症が確認されておらず黒死牟が討伐されたのもまた大正時代とされています。
2.強さ
元鬼殺隊である黒死牟は日の呼吸をもとに編み出した「月の呼吸」を使用します。
月の呼吸は数ある呼吸の中でも型の数が多く多彩な技を繰り出すことができます。
作中では「拾陸ノ型」まで登場しておりどの型も月に由来した名前が付けられています。
月の呼吸に16もの型が存在するのはいくつ技を作っても日の呼吸には届かなかったことを示唆しているのかも知れませんね。
また16という数字は「十六夜」を表している可能性があります。
「十六夜」の由来とされる「いざよう」という言葉には
という意味があります。
16もの型を編み出し一見すると日の呼吸に近づいているように見える月の呼吸ですが実際は全く近づいていないという意味が込められているのかも知れません。
そんな月型の刃で不規則な軌道の斬撃を放つ月の呼吸ですが一振りで何重もの斬撃を繰り出せるは異形の刀の独特な形状による影響が大きいと考えられます。
一瞬のうちに放たれる斬撃は見極めることが容易ではなく拳を握って二か月で柱に昇格したという天才剣士・時任無一郎ですら簡単に腕を斬り落とされました。
また一度に広範囲を攻撃できる特性上複数人を相手にした戦いも得意としています。
最終決戦では悲鳴嶼行冥・不死川実弥・時透無一郎・不死川玄弥の四名を相手に互角以上の戦いを繰り広げました。
鬼である黒死牟は日輪刀の代わりに自身の肉から作られた異形の刀「虚哭神去」を使用して戦います。
いくつもの目が付いた刀はとても頑丈で仮に折れたとしても直ぐに再生できることから実質的に破壊は不可能と言えるでしょう。
一方で鬼の肉から作られている性質上をにの再生能力を阻害する「赫刀」による斬撃には弱いという側面もあります。
また刀は必ずしも手に持つ必要性はなく背中や腕などから直接生み出すことも可能です。
自身の血肉から刀を生成する能力こそが黒死牟の血鬼術であると言えるでしょう。
使用者である黒死牟の技量の高さも影響しているとは思いますが鬼殺隊最強の柱を3人同時に相手にしてなお優位に立つことができたのは異形の刀と月の呼吸の組み合わせによる変則的な斬撃の為せる技ではないでしょうか。
また人間時代から引き継いでいると思われる「痣」による身体能力の向上や相手の体が透けて見えることで筋肉や血管の動きを把握したり相手の行動を予測できる
の領域にも達しています。
さらに鬼の体を手に入れたことによる肉体の強化と高い再生能力も手に入れており作中全体を見ても最上位の実力を持つ鬼といえるでしょう。
無限城の戦いでは鬼にとって大きな弱点である頸の切断による死を超越した領域へと足を踏み入れました。
公式ファンブック・弐では
鬼を超越しかけた」
と記載されています。
鬼の中で頸の弱点を克服したのは鬼の始祖である鬼舞辻無惨、上弦の参・猗窩座そして黒死牟となっています。
このことから上弦の鬼の中でもさらに上位の実力を持った鬼のみが頸の弱点を克服する可能性を秘めているのではないでしょうか。
同じくらいの強さの実力者である上弦の弐・童磨が弱点を克服できなかったのは勝利や性への執着が足りなかったからだと考えられます。
3.縁壱との絆
黒死牟は人間時代の名は継国巌勝と言い「日の呼吸」を生み出した「始まりの呼吸の剣士」継国縁壱の双子の兄にあたります。
当時は双子が不吉な存在と言われており兄の巌勝は優遇され弟の縁壱は「忌み子」として蔑まれ物置のような狭い部屋での生活を強いられていました。
はじめはそんな弟の境遇に同情していた巌勝ですが縁壱に類まれなる剣の才能があることを知ると一転激しい嫉妬と嫌悪感を持つようになっていきます。
縁壱の後を追うように鬼狩りの道へ進み鍛錬の末に強大な力を得る「痣者」となった巌勝ですが代償として寿命が縮んでしまいます。
余命わずかの身となった時に無惨と出会った巌勝は更なる強さを求めて鬼になることを選びました。
完全に袂を分かつことになった二人でしたが数十年の時を経て再会を果たします。
八十歳を過ぎてもなお縁壱の剣技は冴え渡り上弦の壱にまでなった黒死牟を追い詰めました。
自らの死を覚悟した黒死牟ですが次の瞬間、縁壱は刀を構えたまま寿命を迎えてこと切れてしまうのでした。
黒死牟と縁壱には対比とも呼べる描写がいくつか存在しています。
その最たるものが
ではないでしょうか。
「個」の強さに執着していた黒死牟は子孫を残すことはできましたが最終的には家族を捨て後継者を育てることもなく長い時間をひたすら自身の力を伸ばすためだけに使っていました。
その結果黒死牟の想いも技術も後世に受け継がれることはありませんでした。
子孫であり唯一「生きた証」と呼べる時任無一郎ですら自らの手で切り伏せています。
逆に縁壱は子孫こそ残すことができませんでしたが次の世代に様々な「生きた証」を残しています。
「呼吸」がそうでしょう。
鬼殺隊が使う「全集中の呼吸」は「始まりの呼吸の剣士」である縁壱がもたらしたものでしたよね。
「呼吸」があったからこそ炭治郎たちは数々の強力な鬼を打ち倒すことができました。
また無惨討伐に大きく貢献した日の呼吸についても耳飾りとともに竈門家が代々受け継いできました。
縁壱の血縁は途絶えてしまいましたが縁壱が生きた証は「想い」や「技術」という形で後世に残っています。
黒死牟が日の呼吸を使うことができなかったのも黒死牟が一人の力だけで修得しようとしていたからだと思います。
というのも恐らく日の呼吸は何世代にもわたって洗練されていくことでようやく修得することができたのだと考えられます。
縁壱の「日の呼吸」を後世に伝えた最初の人物・炭吉は侍ではなく剣技など全く使えない一般人でした。
いくら縁壱が披露した型を覚えていたとしても呼吸に関してはほぼ独学だったと言えるのではないでしょうか。
育ての指導を受けた炭治郎ですら呼吸の修得には二年もの時間を費やしています。
鬼殺隊でもない炭吉が一人で修得したというのは少し無理があるように思えますよね。
恐らく竈門家は初めから「ヒノカミ神楽」つまり「日の呼吸」を完璧に扱えたわけではないと思います。
「型」を無理なく扱う方法を炭吉が試行錯誤しその結果を後世に伝えそれを元に次の代の人間がさらなる試行錯誤を繰り返して言ったのではないでしょうか。
そうして代を重ねるごとに少しずつ技が洗練されていき炭治郎の代で「日の呼吸」として完成したと言えるでしょう。
四百年以上を生きた黒死牟も同じくらい試行錯誤する時間がありました。
しかしたとえかけた時間が同じでも一人の偏った思考より複数の人間がさまざまな観点から技を磨き上げていくほうが技の発展が早いと考えられます。
以上の点から黒死牟が「日の呼吸」を修得できなかった理由は1人の力だけで技を修得しようとしていたからだと言えるでしょう。
また嫉妬のあまり鬼にまでなってしまった黒死牟ですが心の底では縁壱に対する愛情を持ち続けていたのではないでしょうか。
そう考える理由の1つ目として黒死牟が縁壱の笛を持っていたことが挙げられます。
最終決戦で黒死牟が消滅した場所にはかつて縁壱が持っていた笛が残されていました。
この笛はもともと幼少期に巌勝が縁壱に贈った手作りの笛です。
食べるものや着るもの住む部屋すらも質素なものしか与えられなかった縁壱を不憫に思った巌勝は禁じられていたにも関わらず頻繁に縁壱の元を訪れていました。
そのことを父に咎められ顔を殴られたにも関わらず巌勝はその翌日に再び縁壱の元を訪れています。
そして
すぐに兄さんが助けにくる
だから何も心配いらない」
と言って笛を渡しました。
跡目争いを嫌った縁壱は家を出る際巌勝に
どれだけ離れていてもくじけず日々精進いたします」
と告げています。
実際、縁壱は八十歳を超えて天寿を全うするまで巌勝にもらった笛を持ち続けていました。
縁壱にとって笛は
であり黒死牟も縁壱にとって笛がどういう意味を持っているのかを理解していたと思います。
黒死牟が「兄弟の絆」そのものである笛を持ち続けていた事実こそ黒死牟が縁壱との思い出や絆を捨てきれなかったという何よりの証拠なのではないでしょうか。
根拠の2つ目は黒死牟の
という台詞です。
これは年老いた縁壱が自分が贈った笛を持ち続けていたことを知った時に黒死牟が言い放った台詞です。
この場面の黒死牟は涙を流しながら
お前の声を聞くだけで腹が立ち
顳顬が軋む」
と語りました。
しかし続けて
鮮やかに記憶しているのは
一番忘れたいお前の顔」
と言っています。
口では「嫌いだ」と言っている黒死牟ですが本心では縁壱を認め
という気持ちを持っていたのではないでしょうか。
黒死牟は
と例えられるほど才覚に恵まれた縁壱に激しい嫉妬を抱いていました。
しかし同時に縁壱の強さと人を惹きつける力を認め憧れていたと考えられます。
実際に黒死牟は縁壱の剣技を手に入れるために家族を捨てて鬼狩りの道へと進み縁壱の「日の呼吸」を真似て「月の呼吸」を修得しました。
さらに生まれつきの「痣者」である縁壱と同じ「痣者」の力も手に入れています。
黒死牟が辿ってきた道の先には常に縁壱の存在がありました。
これは言い換えれば常に縁壱を目標に生きてきたと言えるのではないでしょうか。
いくら実力を認めているとはいえ心から嫌いなん人間に憧れる人はいないと思います。
死の間際、黒死牟が語った
お前になりたかったのだ」
という台詞がすべてを物語っていると言えるでしょう。
黒死牟にとって「縁壱に惹かれていた」という事実を認めることは家族などの大切なものと引き換えに強さを得てきた自分の人生を否定することになると言えます。
黒死牟は
と自身に言い聞かせることで必死に自分の人生を肯定しようとしていたのではないでしょうか。
以上の2点から黒死牟は才能に恵まれた縁壱を憎む一方で心の底では弟に対する愛情を持ち続けていたと考えられます。
4.黒死牟の最期
黒死牟は悲鳴嶼行冥、不死川実弥、時透無一郎そして不死川玄弥の四人によって討伐されました。
月の呼吸や透き通る世界といった能力で鬼殺隊を圧倒していた黒死牟ですが「赫刀」や「痣」の発現さらには「透き通る世界」まで修得し始めた四人によって戦況が覆り始めます。
追い詰められた黒死牟は全身から刃を作り出し最終的には斬り落とされた頸すらも再生する異形の怪物へと変貌しました。
頸という弱点を克服した黒死牟でしたが刀に映った自分の姿を目の当たりにし
と愕然とします。
その直後黒死牟の肉体はボロボロと崩れ出始め跡形もなく消え去りました。
黒死牟は
と思うあまりあれほどこだわっていた「侍」としての矜持を捨ててしまったのではないでしょうか。
黒死牟の刀は自身の血肉から作られたものですのでやろうと思えば初めから全身に刃を出現させいることも可能だったと思います。
しかしそれをしなかったのは黒死牟が「侍」に執着していたからだと言えるでしょう。
「侍」ゆえに刀ひとつで戦う戦い方を貫いてきた黒死牟が手にした刀以外の力に頼った瞬間黒死牟は
という当初の目的を完全に見失ったと考えられます。
目的もなくただ漠然とした「負けるわけにはいかない」という気持ちだけが暴走した姿それが異形の怪物だったのではないでしょうか。
そもそも黒死牟が「負けるわけにはいかない」と強く感じるようになったのは年老いた縁壱が寿命で亡くなった後でした。
黒死牟は
誉れ高き死が訪れることはない」
と語っています。
「誉れ高い」とは世間的に評価の高いことを指す言葉ですので黒死牟は自身が認めた最強の剣士である縁壱に殺されるなら本望と考えていた可能性があります。
また同時に
と感じていたのではないでしょうか。
実際、黒死牟は
最も優れた剣士が死んだ今
私は負けるわけにはいかない」
と言っています。
もしかしたら黒死牟は自身が誰よりも強くあることで自分よりも強い「縁壱」という存在がいかに強く気高いものであったのかを証明したかったのかもしれませんね。
まとめ
上弦の壱として鬼殺隊の前に立ちふさがった黒死牟ですがその強さの背景には弟・縁壱への複雑な想いがありました。
もし縁壱が普通の人間だったならもし二人が双子ではなかったなら彼らの人生がほんの少し違っていただけで黒死牟と縁壱が迎える結末は大きく変わっていたのではないでしょうか。
継国兄弟の絆に感動した!
黒死牟の最期が悲しすぎた!
と思った人はまた次の記事でお会いしましょう。
今回は以上です。
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