こんにちはエンタメ考察室です。
鬼舞辻無惨は全ての鬼の始祖であり炭治郎はじめ鬼殺隊士たちの憎き宿敵である鬼です。
無惨の犠牲になった人は数知れず炭治郎の家族を殺し唯一生き残った妹の禰豆子を鬼にした張本人です。
絶対的最強の鬼という位置付けで他者への容赦のない振る舞いや独占的な価値観が印象に残っている方も多いのではないでしょうか。
そんな彼の人生は生まれついての虚弱体質との戦いそして命と強さへの執着がついて回るものでした。
最終決戦では鬼殺隊の猛攻により死が迫ってくるにつれてそれまでの余裕がなくなっていきましたよね。
怒りや焦り、生きることへの必死さをあらわにする姿はある種誰よりも人間臭かったかも知れません。
今回はそんな鬼舞辻無惨の人生について考察していきたいと思います。
※当記事はネタバレを含みますのでご注意ください。
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1.鬼舞辻無惨
無惨の生まれは平安時代に遡りこの世で最初に鬼となった存在です。
その他の鬼は無惨が人間に血を分け与えることで鬼化し彼らを配下に置くことで多くの人間の命を奪い勢力を拡大していきました。
そんな無惨の目的はただ一つ
ことです。
そのために唯一の弱点である
を克服する手がかりを探し邪魔な存在である「鬼殺隊」を皆殺しにするよう配下たちに命令しています。
無惨の言動や行動からは冷酷、独善的、支配的、高圧的な性格が伺い知れるでしょう。
敵見方関係なく自分の気に入らないことは決して許さず相手の懇願も無視して殺してしまうところも恐ろしいですよね。
一見冷静なように見えて支えなことで激高したり苛立ちを露わにします。
命令がなかなか遂行されなかったり一般人に
と言われるなど気に入らないことがあると癇癪を起こし容赦なく攻撃していました。
例を挙げると鬼滅の刃愛好家の間でも「パワハラ会議」と名高い下弦の鬼たちへの粛清が挙げられるでしょう。
無惨のお気に入りだった下弦の伍・累が殺された際上弦の鬼に比べなぜ下弦の鬼はこんなにも弱いのだと詰め寄ります。
その上部下が心の中で自身への不平不満を言った自分の言葉を否定したなど理不尽に理由をつけては順番に虐殺し部下たちを震え上がらせていました。
このように逆鱗に触れると即制裁という恐怖政治で多くの鬼たちを支配しているのです。
また実は無惨は過去に5人妻がいたことがあります。
容姿端麗な青年なので縁談には不自由しなかったのでしょうか。
しかし妻たちは全員無惨の毒舌で追い込まれ自殺しています。
公式ファンブックによれば人間的完成の持ち合わせがないため共感能力が著しく欠如しており
のだそうです。
さらに洞察力と語彙力に長けているので人の弱みを見抜きそこを容赦なくついてしまうのでしょう。
趣味は輸入ものや外国語新しい機械などを学ぶことだということからも知的好奇心が高くそれらを理解する知性も備えていることが伺えます。
知性と人心掌握に長けていたからこそ鬼たちがあれほど服従するのではないかと思います。
恐怖で無惨に服従する者もいましたが矢琶羽や朱紗丸、堕姫など憧れや崇拝の気持ちを持つ部下もいましたよね。
方向性や使い方はともかく周りの者を魅了する力は間違いなくあると言えます。
2.始まり
無惨はなぜこれほどまでに冷徹な鬼となってしまったのでしょうか。
もともとは出生時には死産と思われるほど生命力が弱い赤ん坊でした。
そのまま火葬される直前に鳴き声を上げたことで何とか一命を取り留めています。
その後も虚弱体質は改善されず二十歳を迎える前に死ぬと言われていました。
回想場面では常に病床に伏しており線の細い青年だった無惨の姿があります。
そんな無惨を鬼にしたのは当時主治医だった善良な医者でした。
その医者は苦心して治療にあたっていましたがなかなか効果が表れませんでした。
それに苛立った無惨はついに医者を殺してしまいます。
しかし殺してしまってから医者が投与していた「青い彼岸花」を使った薬が効いていたことに気づきます。
体が丈夫になった代わりに陽の光の下を歩けなくなっていたのです。
まさにこの時無惨の体は鬼と化していたのでしょう。
陽の光を克服し完全に不死身の体になるには「青い彼岸花」を使用した薬が不可欠だったのです。
そしてその詳細を知っているのは殺してしまった医者のみでした。
この時から無惨の長い長い
への探求が始まったのです。
無惨が時折見せる強さと生への異常なまでの執着はこの経験がもとになっているのでしょう。
浅草では酔っ払い三人組に絡まれ顔が
とからかわれたことにひどく立腹し三人とも殺してしまいました。
しかし本当に強く自信に満ちていればこのような酔っ払いの絡みなど相手にしない余裕があるのではないでしょうか。
しかし無惨は鬼でも鬼殺隊でもない一般人の些細な言葉すら許せず怯えさせながら殺しています。
と自分にも相手にも言い聞かせるように言っていましたよね。
・早く完璧な存在にならなければという焦り
・余裕のなさ
が伺えます。
無惨を良く知る珠世にも
と言われその内面の脆さを見抜かれていました。
人間だった頃にも治療が進まない現状に我慢ならず治療の鍵を握っていた医者を殺していますよね。
怒りに任せて刹那的、衝動的に人を殺傷する危うさは昔から健在だったのかも知れません。
しかしそれは生き永らえたいと切に願うからこそであり実はすごく人間臭い一面があるのではないかと思います。
3.縁壱に敗北
鬼となってからの無惨は自らの目的を果たすため本人曰く
である鬼の仲間を増やし多くの人間を襲うことでその生命力を強化していきました。
無惨と同じ血筋である「お館様」こと代々の産屋敷家当主は無惨が鬼になったことによる報いを一族に降りかかる「呪い」という形で受けています。
産屋敷家の人間がことごとく短命なのはその為です。
この呪いの呪縛から一族を救うためそして多くの人間の命を脅かしてきた無罪はじめ鬼たちを根絶するため鬼殺隊が結成されたのでした。
戦国時代に突入しても無惨と産屋敷家および鬼殺隊の戦いは続き因縁のような関係で脈々と続いていきます。
そんな中で無惨が出会ったのが「始まりの呼吸」である日の呼吸の使い手・継国縁壱です。
出会ってすぐお互いに感じるものがあったのでしょう。
無惨はすぐに攻撃を仕掛けます。
しかし縁壱の優れた剣技は最強の鬼である無惨をも追い詰めるものでした。
縁壱の赫刀で斬られた無惨は初めて体が再生できず頸を支えているのがやっとという窮地に陥ります。
縁壱の
という問いにも応えず憎しみと怒りのこもった目で縁壱を見据えていました。
この時のことは縁壱の視点で描かれているため無惨がどのような思いでいたのかは推察することしかできません。
しかし逃走直前に奥歯が砕けるほど噛みしめていたことからもこの戦いが無惨にとって相当忌々しい記憶になったことは想像に難くないですよね。
縁壱に出会うまで無惨は陽の光以外は弱点のない自分を最強の存在として自信と充実感に満ち溢れていたのではないでしょうか。
すでに多くの鬼を支配し全能感を持っていたと思われます。
縁壱度出会った時もまだ無惨の支配を受けていた頃の珠世を引き連れ余裕のある不敵な笑みを浮かべていました。
きっとこの剣士も自分が殺してさらなる力をつけてやろうと思っていたのではないでしょうか。
少なくともしばらく再起不能になるほどの損傷を負わされるとは考えていなかったと思います。
ところが縁壱の赫刀の攻撃は今までのどの剣士とも違うものでした。
ただ斬られただけなら即座に再生できるはずなのに再生できずその傷口が治らないことに愕然とするとともに鬼となってから初めて「死の恐怖」が迫ってきたことでしょう。
それまで命が限りある存在として見下していた
にそこまでの損傷を受けたことに対しても燃え上がるような怒りと屈辱を感じたに違いありません。
その後の無惨は分裂してその場を逃げ去るのがやっとという状態でした。
縁壱が即座に反応しほとんどの分裂体を斬ったために人間の頭ほどの大きさの肉塊しか残りませんでした。
この時の記憶を無惨は後々まで引きずることになります。
身体には深く傷が残り唯一自分を追い詰めた許しがたい敵として特徴的な
「花札のような耳飾り」
をつけた縁壱の姿が強烈に焼き付いたのでしょう。
4.竈門家襲撃
無惨と行動を共にし戦いを目の当たりにした珠世は縁壱に対し無惨はもう縁壱が死ぬまで姿を現さないだろうと告げます。
縁壱は八十歳を超えるまで生きていたので六十年近くは体の回復のために潜伏し復活の時を見計らっていたのでしょう。
あまり新しい鬼を増やしたりする余裕はなかったのではないかと思います。
人間や自殺隊にとっては比較的平和しかし嵐の前の静けさのような不気味さのある時期だったのではないでしょうか。
長い時間をかけてだんだんと回復していった無惨は徐々に活動を再開していったのでしょう。
特に縁壱が亡くなってからはすでに鬼となっていた縁壱の双子の兄・黒死牟と共に縁壱の日の呼吸を継承した剣士を徹底して殺し尽くしたと言います。
さらに江戸時代には狛治ことのちの上弦の参・猗窩座と出会いました。
この頃
と言っています。
これこそが「十二鬼月」の始まりです。
無惨の血を多く分け与えその協力な細胞の多さに耐えうる者が十二鬼月として特別な力を持った鬼になります。
こうして自分の宿敵である日の呼吸の使い手を根絶やしにし強い鬼を増やすことで自陣を固め二度と命を脅かされまいとしていたのではないでしょうか。
このように着々と鬼としての力を強大化する中でなぜ無惨は竈門きを襲うに至ったのでしょうか。
作中では明確にされていませんが大きな目的は「青い彼岸花の捜索」ではないかと思います。
無惨が目指すのは
「完璧な生命体」であり
「陽の光を克服する」
ことです。
そのためには青い彼岸花は不可欠であり竈門家の住む雲取山には青い彼岸花が生息していたことがわかっています。
この事実は公式ファンブックで明かされており炭治郎は幼い頃母の葵枝に連れられ青い彼岸花を見ています。
またその青い彼岸花が咲いていた場所は数百年前に縁壱の妻であるうたが埋葬されていた場所と同じであることも判明しています。
無惨は青い彼岸花のことを調べるうちに雲取山のことを知り探しに来たついでに竈門家を襲撃したのではないでしょうか。
最終決戦の最中、鬼から人間に戻りつつある禰豆子の回想で竈門家の家族を襲った時の無惨の様子が分かっています。
「太陽を克服する鬼など」
「そうそう作れたものではないな」
と言い放っていましたよね。
推測ですが青い彼岸花を探しに来たら偶然、民家があったので襲ったというところなのではないでしょうか。
公式ファンブックによると上弦の鬼になれるほどの素質を持つ者はなかなかいないようです。
そのため無惨は常々強い鬼となりうる人間を探していました。
竈門家は人里離れた山の中にあり市街地に比べると人間を襲ったとしても騒ぎになりにくい場所にあります。
そのこともあり竈門家に目をつけたのではないでしょうか。
青い彼岸花の捜索にしても山の中の捜索には時間がかかるでしょう。
手間を省くため鬼を増やして捜索させようとしたのかもしれません。
いずれにしろ竈門が縁壱と縁があり日の呼吸の継承であるヒノカミ神楽を知らなかった可能性が高いでしょう。
そしてヒノカミ神楽の舞いと耳飾りを受け継いだ炭治郎が出かけていたために生き残り無惨の手によって鬼となった禰豆子がのちに陽の光を克服するあたり運命を感じますよね。
無惨が竈門家を襲撃した理由をこのように考察してみました。
5.無惨の最期
無惨は因縁の相手である産屋敷家のことも根絶やしにするべくずっとつけ狙っていました。
当代当主・耀哉はそのことを逆手に取りわざと無惨をおびき出すことで最終決戦が始まります。
柱を始め、鬼殺隊が集合し総力戦となりました。
前述の通り多彩な血鬼術と圧倒的な攻撃力、回復力を持つ無惨は死力を尽くして戦う鬼殺隊を嘲笑うかのように余裕を見せます。
大切な家族たちを殺された炭治郎や水柱・冨岡義勇が怒りを抑えながら必死に冷静さを保とうとしている中
と切り捨てました。
その後も
「自分は幸運だったと思い」
「元の生活を続ければ済むこと」
と神経を逆なでする発言を続けました。
きっとこれは相手の怒りを煽るための挑発というより心底不思議で言っているのではないかと思います。
公式ファンブックに無惨は人間の官能を理解せず共感力が欠如しているという記載があるためです。
この時のために全てをかけて鍛錬の日々を送っていた鬼殺隊と無惨の温度差は鬼と人間は決して相容れないのだということがわかる場面ではないでしょうか。
「私がこれから皆殺しにする」
と嘯いていた無惨でしたが夜明けまでの長い戦いの中で徐々に消耗していきます。
珠世が開発した薬や炭治郎が代々受け継いできたヒノカミ神楽そして柱たちの命がけの猛攻、無惨は今まで自分が足蹴にし踏みにじってきた一人一人の人間たちの「想い」の前に敗れます。
「完璧な生命体となる」
という目的は果たされることのないまま肉体の死を迎えたのです。
しかしその後自分の肉体の中に捉えられたまま意識を失った炭治郎に
と言っています。
縁壱度同じ日の呼吸の使い手であり陽の光を克服した禰豆子の兄である炭治郎なら
になれるはずと考えたのでしょう。
その炭治郎を自分の代わりに最強の鬼にしようと最後の力を振り絞って鬼化させました。
自分の想いを注いだ炭治郎が不死の鬼になることで野望の達成を試みたとと戦いにおける敗北もなかったことにしたかったのではないでしょうか。
誇りの高い無惨は自分の野望が潰えることや人間に敗北した事実を認めることがどうしても出来なかったと思われます。
そうした心理に基づいた最期の必死の悪あがきだったのではないでしょうか。
その際無惨は人の想いに感動し涙を流しました。
そして
「永遠なのだ」
「私はこの子供に想いの全てを託すことにする」
と言っています。
これまで散々人の想いを踏みにじり「くだらない」と一笑に付していました。
しかし自身の命の危機に瀕すると「永遠の命を得たい」という自分の「身勝手な野望」を「高尚な受け継ぐべき想い」であるかのように自分の都合のいいように解釈を変えたように見えます。
今まで軽んじていた「想い」というものがとてもかけがえのないものだったことに気付くという意味では価値観が大きく変わった瞬間でありその感動で涙が出たのかもしれません。
しかしあくまでその内容は身勝手であり自分がこれまで他人にしてきた仕打ちへの後悔や懺悔は一切ないのが無惨らしいと言えます。
しかし戦いですでに満身創痍だった炭治郎をなぜ無惨は完全な鬼にできなかったのでしょうか。
それはやはり
が関係していると思います。
無惨は自分を唯一絶対の最強の存在とし人間はもちろん忠実に自分に仕える鬼たちにすら無慈悲に接していました。
死ぬ間際になっても改心することなくあくまで自分の考えや願望を貫き通しています。
家族や仲間と言う概念そのものが理解できないためか炭治郎とふたりの心象風景の中でも無惨のもとには部下だった鬼たちは一切登場しません。
意識を取り戻し人間として生きたいという炭治郎に
「死んだ家族や仲間が許さない」
などと唆しています。
しかしその言葉を制するように亡くなった家族たちや柱の手が炭治郎を元の人間の世界へ導きました。
これが炭治郎が人間としての自我を取り戻すきっかけになりましたよね。
これが自分のことよりも人のことを考え大切にしてきた炭治郎に自分の欲望だけを追求し他者を餌や駒としか思わなかった無惨が負けた理由のひとつではないでしょうか。
炭治郎には亡くなった後もなお助けてくれる仲間がたくさんいましたが無惨は最後まで孤独でした。
最強の敵だった無惨も最期は炭治郎に
「私を置いていくなアアアア!!」
と必死にすがり引き留めていました。
冷徹な最強鬼からなりふりかまわない無様とも言える感情的な一面を見せました。
無惨の中にわずかに残っていた人間らしい情念が死の間際に蘇ったのかも知れません。
最期まで生への執着を見せ続けた無惨でしたが彼がこうなってしまったのは出生時からの虚弱体質による思うように体が動かせないことへのもどかしさ、強い肉体への渇望が大きかったのでしょう。
圧倒的強さを極めることは孤独にも繋がります。
誰にも負けない最強の存在でありたいという想いが高じて周囲を寄せ付けない強さ、冷徹さに繋がったのではないかと思います。
部下をも信頼せず鬼たちが自分を攻撃しないよう支配していたのも珠世が指摘した臆病さの裏返しと言えるでしょう。
その圧倒的な強さもさることながら自分勝手さや理不尽さに満ちた強烈な台詞も多くまさに王道の敵ですよね。
珠世やお館様のような冷静で頭のいい人物に図星を突かれたり耳に痛いことを指摘されるとあからさまに取り乱すこともあり随所に脆さが見えます。
その脆さは生き延びたい自分だけは助かりたいというむき出しの欲望から来ているのではないでしょうか。
命ある者ならば誰しもが持ちうるその欲望を全く隠そうとせず周囲の犠牲も意に介さず欲望を達成しようとする執念は凄まじいですよね。
ある意味で一貫性がありブレない軸を持っているとも取れます。
そこが無惨を最強の敵たらしめているのではないでしょうか。
なんだかんだでやっぱり無惨は憎めない!
だけど死んで良かった!
と思った人はまた次の記事でお会いしましょう。
今回は以上です。
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