こんにちはエンタメ考察室です。
炭治郎や善逸と並んで物語の主軸となり猪突猛進を地でいく登場人物といえば嘴平伊之助ですよね。
猪頭という衝撃的な見た目と傍若無人な態度には善逸でなくとも恐怖を抱いてしまうと思います。
そんな伊之助ですが物語が進むにつれて著しい成長を遂げることになります。
内面の成長だけで言えば作中で最も振れ幅が大きかった登場人物ではないでしょうか。
今回はそんな伊之助について解説していきたいとおもいます。
また伊之助が育ての親の形見である猪の被り物をしている理由や作中で描かれなかった神崎アオイとの絆についても考察しているのでぜひ最後までお楽しみください。
※当記事はネタバレを含みますのでご注意ください。
■鬼滅の刃シリーズを無料で視聴したいならU-NEXTがおすすめ!
1.嘴平伊之助
伊之助は猪の被り物と女性のように美しい素顔が特徴的な青年です。
性格は粗暴で自己中心的な言動が多くとにかく自分が強くなることだけを考えて生きていました。
しかし物語が進むにつれて精神的に成熟し最終的にはとても仲間思いの心優しい鬼殺隊士へと成長しています。
山育ち故の卓越した身体能力と鋭敏な肌感覚を持っており野生的な戦闘形式は炭治郎が
と感じるほどでした。
また独自に全集中の呼吸を修得し育てを介さずに鬼殺隊となったとても珍しい経歴の人物といえるでしょう。
「獣の呼吸」は伊之助が編み出した独自の呼吸です。
「公式ファンブック・弐」によれば二刀流の素質鋭い皮膚感覚柔軟な関節そして並外れた戦闘本能が必須であり伊之助以外の隊員の修得は困難とされていました。
腕のすべての関節を外すことで間合いの外への斬撃を可能とする玖ノ牙「伸・うねり裂き」や刀を投擲する「思いつきの投げ裂き」など常識に縛られない自由な発想から生まれる型がほとんどです。
詳細は語られていませんが「獣の呼吸」は風の呼吸から派生した呼吸とされています。
公式ファンブックの呼吸適正判別によれば風の呼吸は暴風が如き激しい気性を持ちをのが目的のために他者を巻き込みつつ進むものに向いているとされていました。
適性だけを見れば風の呼吸の系統は伊之助の性格にぴったりな呼吸と言えるでしょう。
2.猪の被り物
次に猪の被り物を被っている理由について考察していきたいと思います。
自らを「山の王」と名乗る伊之助ですが実際に「山の主」とされる猪に育てられた野生児であることがわかっています。
番外編である「伊之助御伽草子」では伊之助がとある家のおじいちゃんに面倒を見てもらっていたことが明かされました。
通常人間は一定の歳まで言語に触れなかった場合言葉の習得が混乱になるとされています。
伊之助はおじいちゃんに餌付けされたり百人一首を読み聞かせてもらったりといったさまざまな関わりを通して人間の言語を習得することができたといえるでしょう。
公式ファンブックによれば伊之助がいつも被っている猪の被り物は育ての親である猪の形見とされています。
伊之助は番外編でおじいちゃんに面倒を見てもらっている時点ですでに猪の被り物を被っていました。
つまり母猪は伊之助が幼い時にな亡くなっていることが分かります。
猪に育てられた伊之助ですが作中では本当の親についても語られました。
伊之助の生みの親・琴葉は伊之助のように美しい外見を持った女性です。
日常的に夫から暴力を受けていた琴葉は幼い伊之助を連れて上弦の弐・童磨の万世極楽教へと逃げ込みました。
しかし童磨が信者を喰らっていることを知った琴葉は教団から脱走します。
このままでは童磨に親子共ども殺されてしまうと考えた琴葉は万に一つの可能性を信じて崖の上から伊之助を投げ落としました。
琴葉はその直後に童磨によって殺害されており伊之助はその一部始終を目の当たりにしています。
その後崖下の川に落ちた伊之助は猪に拾われ育てられることになりました。
伊之助には琴葉に関する記憶がなく童磨に言われて初めて琴葉の顔を思い出しています。
赤子の頃の記憶ですので思い出せなくても仕方ありませんが作中の描写からは伊之助が無意識のうちに琴葉に関する記憶に蓋をしていた可能性がうかがえます。
実際に琴葉と交流があった童磨が
と言っているように琴葉と伊之助の顔は瓜ふたつでした。
伊之助が常に猪の被り物を被っていたのは母親と同じ素顔を隠すことで目の前で殺された琴葉の最期を思い出さないようにしていたのではないでしょうか。
もちろん育ての親の形見という理由も大きいとは思います。
しかし初めて炭治郎たちに素顔を見せた時に
俺の顔に文句でもあんのか」
と激怒していることからも伊之助が素顔を晒すことを好意的には捉えていないことがわかりますよね。
仮に母親の死を目撃したことが伊之助にとってトラウマになっていたとするならば琴葉を思い出してしまう自らの顔は伊之助にとって辛い記憶を呼び起こす要因となっていたのではないでしょうか。
琴葉の記憶を失っていた伊之助ですが作中では伊之助が蟲柱・胡蝶しのぶに母親の姿を重ねていたような描写が見られています。
小説版「風の道しるべ」で伊之助は童磨に殺されたしのぶを思いながら
と発言しています。
また最終決戦での童磨とのやり取りの中では
と語っていました。
これは琴葉が子守歌として伊之助に歌っていた「指きりげんまん」の歌が伊之助の心の奥深くに温かな記憶として残っていたことに起因しています。
琴葉は父親のもとから逃げたことで片親となり寂しい思いをさせてしまうことを伊之助に謝りそれでも自分が絶対に伊之助を守り抜くという誓いを「指きり」の歌に乗せていました。
まだ赤子だった伊之助には言葉の意味まではよく分かっていなかったと思われますが歌のフレーズや琴葉の温かい気持ちだけはずっと持ち続けていたのではないでしょうか。
しのぶもまたかつて伊之助に治療を施した時に
触らないこと
勝手に引き抜いたらダメですよ
指切りげんまん約束です」
と言っています。
怪我をした自分を思うしのぶの言葉と「指きり」という文句が伊之助がしのぶと琴葉を重ねて見ていた理由の一つと言えるでしょう。
童磨との会話で琴葉の記憶を取り戻した伊之助は
しのぶだと思ったけどしのぶじゃなかった」
と言っています。
一見すると昔会ったことがあると思っていたのはしのぶではなかったという意味に思えますが見方を変えると自分の母親はしのぶではなかったという意味にも受け取れます。
もしかしたら伊之助はしのぶを本当の母親かもしれないと考えていたのかもしれませんね。
3.伊之助の成長
野生児として育った伊之助は他人の気持ちを考えることができない自己中心的な性格をしていました。
しかし炭治郎をはじめとした数多くの人々との交流や幾多の戦いを経験したことで少しずつ人を思いやる心を身につけていいます。
伊之助は鼓屋敷の戦いで初登場しました。
この時の伊之助はただ自分が強くなることだけを考えており炭治郎やその場にいた少女を平気で足蹴にしています。
と諭す炭治郎に対しても問答無用で斬りかかる姿から鬼も人も関係なく見境のない危うさがありました。
また善逸が禰豆子をかばった際には
と刀を向けていたり鬼に殺された人を埋葬する炭治郎に対して
と語っていたりと基本的に相手の立場や状況を一切考えられない人物でした。
オリジナルドラマCD嘴平伊之助の力比べによると伊之助が初めて手にした日輪刀も力比べをして勝った隊員から奪い取ったものとされています。
厳しい自然の中で育った伊之助にとって自分以外はすべて敵という弱肉強食の考え方が当たり前だったのではないでしょうか。
そんな伊之助に変化が見られたのが那田蜘蛛山での戦いでした。
これまでずっと一人で戦ってきた伊之助は自分が前に出ることよりも戦い全体を見ている炭治郎の強さを実感します。
また水柱・冨岡義勇の戦いを目の当たりにした際には
とその実力差を素直に認めていました。
他人の気持ちに一切興味を示さなかった伊之助が他人に親切にされた時に「ホワホワ」する姿が見られるようになるのも那田蜘蛛山あたりからではないでしょうか。
具体的には鼓屋敷で負った傷を癒すために立ち寄った藤の花の家紋の家でおばあちゃんにやさしくされた時や炭治郎に危機的状況を救われた時に「ホワホワ」しています。
つまり誰かに優しくされた時のうれしい気持ちが「ホワホワ」として描写されていると推察できます。
父蜘蛛に殺されそうになった伊之助が見た走馬灯には母・琴葉の記憶のほかに炭治郎や善逸藤の花の家紋のおばあちゃんが登場していました。
自分の力だけで生き抜いてきた伊之助にとって炭治郎やおばあちゃんの他人を思いやる心は戸惑いを感じつつも心地の良いものだったと思われます。
また無限列車編では初めて自ら他人のために戦っています。
下弦の壱・魘夢に見せられた夢の世界では伊之助は炭治郎たちを統べる親分として君臨していました。
夢の中の伊之助は自分が「行くぞ」と言ってもついて来ない禰豆子に対して
と伊之助なりに相手の気持ちを思いやる行動を取っています。
この場面のほかにも後ほど解説する小説版で
きよの髪飾りを探す話や禰豆子が人間に戻る際に思い起こしている記憶の中にどんぐりを渡している伊之助が映っているなど伊之助が大切にしているどんぐりを他人に分け与える場面がたびたび登場していますよね。
このことから伊之助の中で
が育まれつつあったといえるでしょう。
夢から覚めた伊之助は
と言いながら魘夢の手から乗客を守っています。
また繰り返し催眠をかけられたことで夢と現実の判断が曖昧となり現実世界で自らの首を切ろうとした炭治郎に
と伝えて助けています。
さらに自分を庇った炭治郎が車掌に刺された際には明らかに動揺しているような素振りも見せていましたよね。
親分としてという名目ではありますが無限列車編は伊之助が他人を思いやり弱者のために刀を振るう大きな転換になった戦いと言えるでしょう。
また上弦の参・猗窩座との戦いによって炎柱・煉獄杏寿郎が亡くなった際には自らの弱さに打ちひしがれる炭治郎を
と涙ながらに鼓舞しています。
優れた技量を持ちながらも常に人のために戦い続けた煉獄さんは他人を思いやる心が芽生え始めた伊之助にとっては密に憧れを抱いていた人物だったのではないでしょうか。
鼓屋敷で初登場した頃の伊之助ならばきっと煉獄さんの死を目の前にしても何も感じず涙を流すこともなかったと言えるでしょう。
遊郭編では率先して仲間と協力して戦う姿が見られるようになります。
上弦の陸である堕姫と妓夫太郎との戦いでは苦戦を強いられるなか。
と語っており炭治郎や善逸と協力して戦うことへの抵抗感が薄れていることが分かります。
むしろ3人なら勝てると発言する姿からは炭治郎と善逸に多大な信頼を置いているように思えますよね。
自分たちが戦っている堕姫よりも強い妓夫太郎を音柱・宇髄天元に任せている点も自分だけの勝利よりも鬼殺隊としての勝利を優先しているように見えます。
このように遊郭編ではより仲間への意識が高まっており周りの迷惑を考えずに暴走する姿はほとんど見られなくなっています。
無限列車で煉獄さんという大切な仲間を失った経験が伊之助の心に大きな変化をもたらしたといえるでしょう。
最終決戦では母親・琴葉と胡蝶しのぶを殺害した童磨に対し
と怒りを露わにしています。
また無惨と対峙した際にも
と語り涙ながらに
と訴えました。
この様子から炭治郎や善逸、柱といった伊之助が実力を認めた人々だけでなく一般の隊員のように力の弱い人たちのことも自分と同等の仲間だと思っていたことがわかります。
以前の伊之助であれば自分の力で戦えないような弱者には興味を持たなかったのではないでしょうか。
数多くの出会いや別れ同じ目的を持った仲間の存在が伊之助に人間らしい温かな心を与えたと考えられます。
炭治郎が鬼と化した際にはかつて炭治郎と交わした約束が伊之助の脳裏をよぎります。
兄弟みたいなものだからさ
誰かが道を踏み外しそうになったら
みんなで止めような」
という約束を果たすため伊之助は襲い来る炭治郎に刃を向けました。
しかしどうしても優しい炭治郎の笑顔が思い浮かび刀を振り切ることができませんでした。
鬼化した炭治郎には自我がなく明らかに伊之助を殺そうと襲いかかっていたので伊之助は刀を振り切らなければ自分が死んでしまうことを理解していたと思います。
頭の中では自分が炭治郎を止めなくてはならないと分かっていたと思いますが仲間の大切さや人の命の尊さを知ってしまった伊之助の心が炭治郎へ向けた刃を振りぬくことを拒んだのではないでしょうか。
炭治郎できねえ」
という台詞にはそんな伊之助の凄まじい葛藤が込められていると思われます。
その後禰豆子に噛みついた炭治郎に対して
あんなに優しかったのに
元の炭治郎に戻れよ」
と涙を流しながら殴りつける場面は伊之助の心からの叫びだったと言えるでしょう。
このように初めは他人のことなど一切考えられない自己中心的な性格だった伊之助ですが仲間との絆を育んでいくにつれて人間らしい温かな心を身につけていき最終的には仲間のために涙を流せるまでに成長しました。
4.神崎アオイとの絆
現代編である最終話では伊之助とアオイのひ孫・觜平青葉が登場しました。
作中ではあまり深く語られていませんがこのことから伊之助とアオイが夫婦となったことが推察できます。
伊之助とアオイが初めて出会ったのは那田蜘蛛山で受けた傷を癒すために伊之助たちが蝶屋敷で療養した時でしたよね。
この頃の伊之助は訓練とはいえ遠慮なくお茶をかけていたり鬼ごっこなのにアオイの体をひっくり返していたりととてもアオイに対して特別な感情を抱いているようには見えませんでした。
アオイもまた訓練をサボる伊之助に対してあまり良い印象は持っていなかったと思われます。
むしろ真摯に訓練に臨み前線に立てないアオイの気持ちを察して
と語った炭治郎に好意を寄せているようにも見えました。
そんなアオイと伊之助の関係性に変化が見られたのが遊郭編ではないでしょうか。
遊郭編では本来炭治郎等ではなくアオイが任務にあたる予定でした。
しかし前線に出られないアオイの代わりに炭治郎たちが天元と共に遊郭へ潜入することになりましたよね。
上弦の陸の討伐も意識不明の重体から目覚めたばかりで暴れ回る伊之助に対して
薬も効きづらいから気をつけなさいって
しのぶ様にも言われたでしょ
すぐ忘れるんだから」
と忠告しています。
もともと厳しい物言いが目立つアオイですがこの時の発言は伊之助を心配に思うがゆえの厳しさではないでしょうか。
そんなアオイに対して
と言い返す伊之助ですがこれは見方を変えればお互いに対等な相手として接しているとも受け取れる微笑ましいやり取りですよね。
小説版「風の道しるべ」では伊之助とアオイの心の距離が少しだけ近くなった出来事が描かれています。
カナエとの絆の証である蝶の髪飾りを鴉に奪われたきよに対し伊之助は
と言い放ちました。
アオイはそんな伊之助を寂しげな目で見つめるだけでいつものように説教をすることはありませんでした。
普段ならばすぐさま怒鳴りつけてくるアオイの予想外の反応に伊之助は居心地の悪さを感じています。
他人にどう思われようと気にしない性格と言える伊之助がまるでアオイが自分にどんな感情を抱いているのかを気にしているように見えますよね。
その後きよが髪飾りを大切にしていた意味を知った伊之助はきよにツヤツヤのどんぐりを贈り
と謝罪しました。
きよの髪飾りを取り戻すために走り出す伊之助にアオイは鴉の特徴を伝え
と声をかけました。
小説ではアオイの言葉を聞いた伊之助がもう立ち止まることなくきよの髪飾りを探しに出かけたと記されています。
これはアオイの一言で伊之助の中にあった居心地の悪さが払拭されたことを示しているのではないでしょうか。
伊之助の心持ちに影響を与えるほどアオイの存在は大きくなっていたとも考えられますね。
無惨討伐後の様子を描いた204話ではつまみ食いする伊之助をアオイが諭す場面がありました。
アオイは伊之助専用の食事を用意し
だから盗み食いはやめてね」
と教えています。
これまでの厳しく叱りつけるだけのアオイとは違い温かな愛情のようなものが感じられる場面ですよね。
伊之助もまた頭ごなしに否定するだけではないアオイの対応にどこか嬉しそうに微笑む姿がありました。
「公式ファンブック・弐」では真面目で責任感の強さからあまり笑わないアオイが伊之助の予想外な行動にはたびたび笑わされていることが記されています。
また単行本の書き下ろしページでは木の実で作られた飾りのような贈り物をアオイにあげている伊之助が描かれています。
こうした点から始めはアオイに対して特別な感情を持っていなかった伊之助ですがアオイの厳しい言動の中にある思いやりの心に気付いた伊之助は少しずつアオイのことが気になる存在になっていったのではないでしょうか。
まとめ
初登場時は他人を顧みずに自分の都合ばかりを押し通していた伊之助ですが炭治郎をはじめとするたくさんの人々との関わりを通して内面的に大きな成長を遂げました。
弱肉強食の自然界で育ったがために自己中心的な性格となった伊之助ですが本来の伊之助は周囲からの影響を受けやすい素直で純粋な人物なのではないでしょうか。
そう考えるとアオイのように厳しくも優しく導いてくれる存在がぴったりなのかも知れませんね。
炭治郎できねえ」
の台詞で泣きそうになった人は次の記事でお会いしましょう。
今回は以上です。
■鬼滅の刃シリーズを無料で視聴したいならU-NEXTがおすすめ!